どこでも置けるバイオトイレをめざして!-太陽光発電システム-

みなさんこんにちは。バイオトイレ担当のSです。

バイオトイレの太陽光ページでもご紹介していますが、弊社岡山工場にてバイオトイレ用太陽光電源の実証実験を4年ほど実施しています。
世間でよく使われている住宅の屋根や広大な敷地で展開しているメガソーラー発電所とは全く違い、商用電源(いわゆる電力会社の電源)を使用しない電源です。
今回はこの太陽光電源についての記事となります。

【実験のきっかけ】

小笠原の母島へ設置したバイオトイレは太陽光、風力併用型の自立型電源システム。
充電用バッテリーが鉛バッテリーのため、1年おきに交換しなくてはいけません。
「このバッテリー交換がなくなれば…」というのが今回の電源の開発・実験のはじまりです。
※利用者が元々少ない(1日5名程度)ため、オガクズ加熱用ヒーターは不使用とし、し尿の分解に最低限必要な攪拌と換気、照明の電源を確保するのみです。

【バイオトイレに使用する電源とは】

そもそも、バイオトイレはオガクズに「し尿」を含ませて攪拌する(かき混ぜる)ことでその水分を飛ばし、分解する仕組み。
電源のないところでも使用できますが、一方で電源のあるところでは攪拌用モーターと加熱ヒーターを使用して効率的にし尿を処理することができます。

電源のないところでバイオトイレを設置する際の代表的な選択肢としては、下記の3つ。

・足漕ぎ式…人力が頼り。
・発電機…燃料の補給が必要。
・風力発電機…風任せとなり、電力の供給が不安定。

それぞれに欠点がありました。
そこで、環境に配慮しながらも安定的な電源供給をし続けられる電源として「太陽光発電システム」の検討を進め、「オフグリッドソーラーシステム」にたどり着きました。

足漕ぎ式・人力(イラストは猫力)
エンジン式発電機(ガソリンや軽油の燃料補給が必要)
風力発電(メンテナンス頻度が高い+無風の時は発電しない)

ダイチクでは環境に配慮しながら、メンテナンスをなるべく少なく、電気を安定的に供給し続けられる電源として検討を進め、「太陽光発電システム」の利用にたどり着いたという訳です。

バイオトイレの電源システム作りのため、岡山工場で実証実験を重ねています。

【バッテリーについて】

従来の太陽光電源のバッテリーは自動車と同じタイプの「鉛バッテリー」を使用していたため、2~3年でバッテリー交換が必要で、運用コスト面での課題がありました。
今回の実験で使用している太陽光電源のバッテリーは電気式自動車で使われている「リチウムイオンバッテリー」バッテリーメーカー曰く14年は使えるという驚きの長寿命バッテリーです。

ダイチクが使用している太陽光発電システム→オフグリッドソーラーシステム

この太陽光発電システムを利用して、現在の小笠原諸島・母島に設置されているバイオトイレと同じ条件で稼働できるのかを実験しています。

【実験内容】

<母島で使用している電源の条件>
・W-16型の機種を使用したバイオトイレでヒーターは使用しない。
・暖房便座の通電なし。照明器具および排気ファンを接続。
・太陽光パネルは4枚、風力発電機を補完充電用に用意。

という条件で設置、使用されています。
これと同等の条件で計算すると、トイレの消費電力は130W。停電保証日(全く発電せず、バッテリーだけで使用できる日数)を1日としてシステムを設計すると下記のシステム内容となりました。

<(株)大築岡山工場での実験の条件>
・太陽光パネル 165W型を4枚
・DC48Vシステム
・バッテリーは100Ahを2台

※ 今回はヒーターを使用しない想定ですが、ヒーターを使う場合はシステムの内容を変更すれば使用できます。その場合、太陽光パネルやバッテリーの台数が変更になります。

★例えばヒーターを使用した場合は130Wの消費電力が330Wに増大。
・太陽光パネル8枚
・バッテリーは100Ahを4台
というシステムにすれば、ヒーターを使用してバイオトイレの運転が可能です!

※ 事前の電力計算さえきっちり行っていればもっと大型の家電機器、エアコン、冷蔵庫などもこのシステムで動かすことができます。

【発電データから分かること】 

発電データとして太陽光パネルの発電量と電池の電圧が分かるようになっており、過去30日分のデータストックを機器内に保存するようになっています。
そのデータを毎月ダウンロード、まとめたものがこちら。

グラフがびっくりするぐらい平ら・・・。
いかに安定的に発電しているのかが分かる重要なデータですが、これじゃぁブログのネタとしてはパンチがない…。(面白さを求めてしまう関西人あるある)
一方でバッテリー側もいつ表示を見ても100%を示していました。
壊れてないかを確認する為に通常は入れていない加熱ヒーターをONにして消費電力を増やしてみたところ、次の日には78%にまで低下していたので、故障している訳ではないようです。

機器の故障はないという確認が取れたので、ヒーターをOFFにして実験を継続しています。
ただ、グラフをよく見るといくつか妙に飛び出たデータがあります。

ここにスポットをあてて分析を続けましょう。

先ほどのデータではわかりにくかったので全期間のデータから月ごとのデータを出して平均値をグラフ化したものがこちらです。

※2020年7月〜2022年7月までの2年間の推移表

上記のデータは月別の1日平均発電量を示しています。(2020年7月から2022年7月までの1年間)

【さらに詳しく分析】

春夏秋冬の見比べの為に抜粋した4種類のグラフ。

発電量はほぼ一定ではありますが、どの月にも共通しているのが「発電量が低下した日」と「発電量が増加した日」が必ずあるという事。
このような結果が出た原因はこのデータからでは、はっきりわからないものの、大きく落ち込んだ日の次の日には必ずジャンプアップしているのが面白いですね。
それを踏まえても年間を通してほぼ同じ発電量。各グラフ、700Wh前後のデータを示しています。

<豆知識>

太陽光を集めて発電するソーラーパネルの表面は熱に弱く、一番安定して発電できる温度は表面温度が25℃程度と言われています。
25℃以上になってしまうと、発電効率が下がるという研究結果も有ります
カンカン照りの下でどんどん発電していくものだと思っていたので、意外でした。

【発電データと気象データの比較】

次にこちらのデータ。

過去に検証したデータですが、発電量が大きく落ち込んだ日の日照時間データと比較してみると、ほぼ同じカーブのグラフになるのが分かります。
その中でも面白いのが8/15。
日照データでは2時間も日照がなかったという事は曇り空と考えられます。
しかし発電量はキッチリ確保されているという点。曇り空でも発電しているのがよくわかりますね。

これで晴れの日でも曇りの日でも、発電されているという実証ができました。

【まとめ】

・初期設置費用のみでその後の電気代が不要。
・晴れの日も曇りの日も安定した発電量で使用可能。
・電源使用による分解処理能力の向上により、足こぎ式バイオトイレに比べて処理能力が倍増。(電源使用のS-25型バイオトイレは50回/1日なのに対し、無電源足こぎ式のAS-25PK型の処理能力は25回/1日となっています)

電源が無い!と諦めていた場所でも太陽光発電システム「オフグリッドソーラー」で電気式処理をするバイオトイレが置ける可能性が一つ増えました!

この実験の結果から、ダイチクのバイオトイレは次の段階へ向かいます。

それは…

ログハウスを使用したバイオトイレへのソーラーパネルの設置!

これまで何度か設置しているログハウスを使用したバイオトイレでは、電源(コンセントの接続先)を準備して動力の確保が可能な現場でした。
しかし、それではまた設置場所に限りが出てきてしまう為、それを改善するべく行っていた、このソーラーパネルによるバイオトイレ稼働実験。

問題なく稼働することが確認できたのでついに実際にバイオトイレを日常的に使用する場合の実証に移ります!

弊社岡山工場の敷地内にログハウスを一棟組立てて実証開始!
次回は実証実験用のログハウス設置について紹介します。

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